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料理人から転身 通年出荷を実践 野菜50品目

2024年3月3週号

坂井市・袖 貴博(そで たかひろ)さん

 坂井市三国町の袖 貴博さん(45)は、料理人から農家へ転身した。ハウスと露地で、トマトやホウレンソウ、白ネギなど50品種以上の野菜を家族とともに生産する。

有機肥料に手応え 冬でも10品目  

 袖さんは大阪で料理人をしていた。両親が祖父母の農地を受け継いで農業を始めていたが、自身は家業を継ぐつもりはそれほどなかったという。

 農業に興味を持つようになったきっかけは、2015年に県内のレストランで働き始め、地域の直売所で仕入れをするようになったことからだった。

 「仕入れで直売所に毎日行くようになって、出品されている野菜の新鮮さや珍しい品種の多さに驚かされた」と袖さん。

 18年に園芸カレッジで基本的な栽培方法などを学びながら、家族とともに野菜の多品目生産に取り組み始めた。

 冬場でも、白ネギやスティックブロッコリー、芽キャベツなど10品目以上を出荷し、年間を通した生産と他農家との差別化を図っている。

 県内のレストランにも出荷し、レストラン側からの要望で生産に挑戦したこともあった。

 「野菜のおいしさは鮮度だと思う。鮮度に勝る調味料はない。その日の朝に収穫したものをその日のうちに食べてもらいたい」と、料理人としての目線は今でも健在だ。

 「農業も料理もお客さんに提供する側で、食べてもらっておいしいと言われることがうれしいと感じる部分は共通している」

環境に配慮した農法  

  袖農園では、15年前から越前ガニの殻を自分たちで乾燥させ、肥料にして利用していた。袖さんは、子供が生まれた昨年から有機肥料を使って栽培する。

 「今までの肥料や農薬のコスト削減にもつながると感じた。収量や形をそろえる慣行農法が悪いとは思っていなかったが、環境に配慮した農法も続けていきたい」

 袖さんは「今はまだうまくいかないことが多く、いろいろと試している段階。家族と協力しながら、一つ一つの収穫量を増やしていきたい」と話してくれた。

 

写真:スナップエンドウの生育確認をする袖さん。同町にある直売所のほか、県内のレストランに出荷する