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伝統野菜「河内赤かぶら」 魅力伝え残す

2023年10月4週号

山の傾斜利用 焼き畑栽培

食感、色合い残しスイーツに

福井市 宮崎幸枝さん

 

 「『河内赤かぶら』やこの地域の良さを守り続けたい」と話すのは、福井市南野津又町の宮崎幸枝(みやざき ゆきえ)さん(79)。定年退職を機に、地元の女性らと共に上味見地区の伝統野菜「河内赤かぶら」を使ったパウンドケーキなどの加工品や料理などを提供する団体「上味み(かみあじみ)ママーズ」を設立した。河内赤かぶらの生産や加工品の製造販売だけでなく、土・日曜日には、集落内の資料館だった施設を利用し、予約制の伝承料理を提供する食事処(どころ)「いじら・やきはた食堂」も営む。

 

 宮崎さんらが活動する同地区は、福井市の中でも山間部に当たり、住民の平均年齢も70歳以上と高齢化が進んでいる。しかし、伊自良温泉などもあり、自然豊かで懐かしさを感じることができる。特に、山の傾斜を利用した焼き畑で栽培する河内赤かぶらは、独特の赤みと味わいがあり、この集落以外ではうまく育たない唯一無二の伝統野菜だ。

 「知り合いの生産者から、もっと河内赤かぶらの良さを広めたいという思いを聞き、自分のできることをやってみようと始めたのがきっかけだった」と話す宮崎さん。当時は、酢漬けや煮物などに利用するだけだったが、土産物にもなるお菓子に利用できないかと考え、砂糖とレモンで煮詰めたグラッセを考案。えぐみを抑えつつ、特有の食感や色合いを残しながら菓子に利用できる形にすることができた。

 

温泉の売店や市内道の駅で販売

 

 現在は「赤かぶパウンドケーキ」のほか、地元で取れたサツマイモやカボチャを使ったパウンドケーキを製造。伊自良温泉の売店や市内の道の駅で販売する。

 「設立当時は色々なイベントに出向いて販売していたが、今は近所での販売がメイン。生産量も少なくなり、自分たちも年齢を重ね、これくらいがちょうどよい量なのかとも感じている」と話す一方「少なくはなってきても、この土地と河内赤かぶらの良さはこれからも伝えていきたい。せっかくあるものを無くしてしまうのはもったいない」とこれからの継続意欲について話す。

 「自分たちの活動を続けている間に、受け継いでくれる若い担い手が現れてくれたらうれしい」と笑顔で話してくれた。

 

「みんなで集まって何か作業をすることが息抜きになっている。これからもみんなで協力しながら地元の味をつないでいきたい」と宮崎さん

 

パウンドケーキは1本と小袋入りのカットサイズの2種類(1本750円、小袋180円、税込み)

 

写真③:山の斜面にある河内赤かぶらの畑。8月中旬に播種し10月中下旬から収穫予定(提供=宮崎さん)