ドローン農薬散布 複数で長時間作業目指す
2024年6月3週号
液剤/電力 航行中に補給
福井県工業技術センター
福井県工業技術センター(福井市)では、複数の小型無人機(ドローン)を使った農薬散布システムの開発に注力しており、2022年4月からバッテリーの容量や散布量の課題解決に向けた農薬散布システムの開発に取り組んでいる。
産業用ドローンは、農業や測量などさまざまな分野で活用されており、農業分野では、主に農薬の空中散布に使用され、農作業の省力化につながっている。一方で、搭載しているバッテリー容量が少なく、最大飛行時間に限りがあることや、散布資材を頻繁に補充する必要があることなど、連続した作業が困難であり、効率化が図られないといった課題があった。
同センターが開発中のシステムは、散布用の先頭ドローンと散布を補助する後続ドローンで散布作業を行うというもの。地上に設置したタンクから、送液ホースで散布液剤が先頭の散布ドローンに送られるほか、地上の大容量バッテリーから送電ケーブルで給電を行うことで、広範囲で長時間の散布が可能となる。
後続ドローンは、ホースやケーブルを持ち上げて垂れ下がりを防止しているが、安全のため、強い負荷がかかると外れる仕組みとなっている。今年1月に先頭ドローン1機と後続ドローン2機の合計3機で実証試験を行った。
ドローン本体は、株式会社石川エナジーリサーチの国産ドローンを使用しており、今年5月にNOSAI福井(福井県農業共済組合)が運用するRTK固定基地局(GNSS補正情報配信システム)との稼働確認を行った。基地局から補正された正確な位置補正データを受け取ることで、安全・安定性の向上が図られ、高精度な自動航行が可能となる。
同センター機械・金属部機械システム研究グループの田中大樹主任研究員は「人手不足の問題を解決するには、ドローンやロボットによる自動化が不可欠だ。今後は、先頭ドローンだけでなく後続ドローンでも散布を可能にすることで、一度に広範囲な面積で作業ができるようなシステムの開発を行っていきたい。実用化を目指して、システムをさらに改良し完成度を高め、農家の負担軽減につながるよう、これからも開発に取り組んでいきたい」と話す。
ドローン3機での散布システム実証試験(写真提供=福井県工業技術センター)
データ:散布システム構成図
散布ドローンと田中主任研究員