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福井県唯一の農家と協力 養蚕をもっと知って

2025年6月2週号

絹織物「越前奉書紬」職人 嘉村 亜希子さん・坂井市

座繰りや機織り体験開催

 坂井市三国町の「くらしつむぐあとりえ」で福井の伝統織物「越前奉書(ほうしょ)紬(つむぎ)」を生産する嘉村(かむら)亜紀子(あきこ)さん。共通の知り合いを通じて出会った養蚕農家の杉本英夫さん(65)とともに、養蚕の継承と普及に尽力する。嘉村さんは「県内で1軒が守り受け継ぐ養蚕を知ることで、歴史だけでなく、環境の大切さや生きる原点を知ってもらいたい」と話す。

 元々石川県の牛首(うしくび)紬(つむぎ)の織職人で蚕の繭から糸をひき、一から手織りで織物を生産していた嘉村さん。結婚や転勤を機に職を離れ、福井に戻っていた。
 子育ても一段落し、また織物職人として仕事を始めようと考えた時に、前の職場で聞いた福井の養蚕農家を思い出し、2016年に知り合いを通じて杉本さんに連絡。 「初めて蚕さんを見た時はびっくりして、触れないと思ったが、興味深く、杉本さんに色々教えてもらうようになって、かわいくなってきた」と話す。

 毎日のように杉本さん宅へ通うようになり「当たり前が尊く、自然や環境の大切さ、地球全体のことを考えるようになった。単なる歴史の一つではなく、その大切さや養蚕をもっと多くの人に知ってもらい、後世に受けついでいかなければと感じた」と話す。

 2021年から杉本さんとともに蚕の座繰(ざぐ)り体験や奉書紬の機織(はたお)り体験会などを開催。県内外から参加者が集まり、養蚕について知る人も増えた。

 24年の秋からは、自身のアトリエで座繰り体験会を人数を限定して開く。「生産から機織りまでの一連の流れを知ってもらうことで、その尊さや環境配慮への思いをしっかり感じてもらいたい」と話す嘉村さん。体験用に桑や蚕数頭を育てている。

 養蚕の指導役も務める杉本さんは「繊維産業の礎となる養蚕に誇りを感じ、続けていくことの意義を肌で感じながら、少しずつ広めていきたい」と話す。

 嘉村さんは「これからも『細く長く』のスタンスで、手仕事にこだわり、養蚕の大切さを広めていきたい」と話す。

 

写真①「これからも福井で養蚕を続けていく土台を作っていきたい」と嘉村さん

写真②嘉村さんの織物は希少なため、すべてオーダーメイド。ストールや着物、財布などの小物などにして販売


写真③蚕の生育状況を見る杉本さん(左)と妻の淑美さん(64)(右)


データ④イベントや体験会の情報などは写真共有アプリ「インスタグラム」で随時更新中

インスタグラムURL:https://www.instagram.com/kurashitsumugu/