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高浜町の薬草栽培 高浜町を薬草の聖地に

2018年6月2週号

2013年度から国の補助事業が始まり、全国各地での薬草栽培に振興の兆しがある。本県高浜町では「青葉山麓研究所(同町関屋)」を設立し、学術的に有用な植物が多数自生する青葉山の環境保全を基盤に薬草事業を展開。六次産業化、栽培技術をリードする薬草栽培の先進地を目指す。

 国内での薬草生産は72年の中国との国交正常化から、安価な輸入品に押されて減少し、栽培技術とともに土地に適した種苗を失った。しかし、近年の中国の経済発展により価格は高騰し、国内栽培の巻き返しに期待が寄せられる。
 青葉山は京都府に隣接し若狭(または丹後)富士とも呼ばれ山容麗しく、燃料不足の戦中でも、薪木を求めて人手が入らなかった類稀な植生環境を持つ。その証拠に、若狭側と丹後側でDNA組成が若干異なる固有種のオウキンレイカが定着し、他地域をはるかに凌ぐ600種以上の有用植物の自生が確認されている。この山麓地域資源を有効活用する目的で、13年に「青葉山麓研究所」が設立された。
15年からは東京生薬協会の小谷宗司栽培指導委員長・磯田進栽培指導員の指導を仰ぎ、町内で20種以上、地域農業者十数人が試験栽培を担っている。また、試験栽培地を拡大する中、耕作放棄地にゴシュユの成木320本、幼木1000本が密生しているのが発見された。
ゴシュユは享保年間に輸入された薬木で、熊本県などで90年代まで栽培されていたが、絶えてしまった貴重な品種。中国での減産の煽りを受け、価格は高騰し、同町の主力薬草として期待される。17年からは本格的に全量収穫し、京都の生薬問屋へ納品している。「今は若干赤字だが黒字化したい。今後は栽培面積を増やし、幼木を移植する予定。」と高浜町産業振興課・田原文彦課長補佐は話す。
 また、北里大学などの研究機関との連携も密で、栽培薬草や自生有用植物の提供を依頼されることも多い。国内材料を確保することが極めて困難な中、同町は「薬草の聖地」として期待されている。「将来は六次産業化を、高浜町を薬草栽培の先進地にしたい。」と田原課長補佐は意気込む。

 

乾燥中のゴシュユを手に取る田原文彦課長補佐

 

ゴシュユの実(青葉山麓研究所提供)