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ブドウ産地の継続へ 特産「若狭ふじ」 独自性で勝負

2023年8月2週号

「紅富士」改良しブランド化 収穫・梱包作業を省力

 「ブドウの産地を続けていくための挑戦だった」と話すのは、高浜町鎌倉の永野和夫さん(46)。家族とともに花きや野菜のほか、ハウス5棟(20㌃)で高浜町のブランドブドウ「若狭ふじ」を生産する。
 永野さん方は代々「鎌倉ブドウ」の産地を受け継ぐブドウ農家。「デラウェア」を中心に生産をしてきたが、父親から「このまま生産を続けていても先が見えない」と言われたという。それでも、今まで続いてきた鎌倉ブドウの産地を終わらせたくないと考えた永野さんは、独自性のある品種で打開しようと決意した。
 試作としていくつかの品種を栽培する中で、永野さんがおいしいと感じた品種が若狭ふじの元となる「紅富士」だった。
 紅富士は8月上旬から収穫できる大粒の赤ブドウで、酸味が少なめで甘味が強く、果肉6割、果汁4割と果汁が多いのが特徴。しかし、生産には課題が多い品種でもあり、皮が薄いため裂皮しやすく、房からすぐに脱粒してしまうという特性がある。味は良いが、房で出荷しても輸送中にバラバラに崩れ、梱包材などが果汁で水浸しとなってしまう。
 「課題は多いが、自信をもって提供できるおいしさの品種はこれしかない。簡単ではないが、クリアできないものではないと感じた」と当時のことを話す永野さん。
 高校生の頃に学んだ茎頂培養の知識を生かし、自宅の一室をブドウ専用の研究室に作り変え、2003年に研究を開始。3年かけて若狭ふじの改良に成功した。
 枝の誘引も父親から基本を学びながら、若狭ふじに合わせたものに改良。脱粒しやすい特性を考え、サイドに定植した樹を低めに剪定し、枝を斜めに誘引。中央に作業スペースを設けることで、収穫と梱包作業を同時に行えるように工夫し、出荷までにブドウを移動させる回数を最小限に抑えている。現在は県外への出荷のほか、市内のスーパーや直売所で販売している。
 地域の学校給食へ食材の提供や収穫体験の協力も行う永野さん。「子供たちをきっかけにして、家族全体で地産地消に取り組んでもらえるとうれしい」と話し「これからもおいしいブドウや野菜を多くの人に届けながら、次の世代への種蒔きと成長を見守っていきたい」と笑顔で話してくれた。

「手間はかかるが、その分、おいしさが詰まっている」と笑顔の永野さん

写真②:袋がけをせず、結実後は農薬の散布を減らし防虫ネットなどで病害虫を防ぐ

写真③:皮をむかず口に含むと果汁があふれ出し、甘さとブドウの香りが広がる。8月中旬に出荷を開始