ミカンの皮で加工品作り 規格外を有効活用
2025年11月1週号
敦賀市 下野長兵衛みかん園 下野 浩稔さん・寿栄子さん
敦賀市東浦地区の元比田で「東浦みかん」を栽培する下野浩稔さん(65)。64歳で会社を退職し、母の寿栄子(91)さんからミカンの栽培技術を学ぶ。
現在、寿栄子さんが営む観光農園「下野長兵衛みかん園」を手伝いながら、ミカンの皮を活かした加工品作りにも取り組み、六次産業化による新たな価値づくりに挑む。
6次産業化のきっかけは2024年の大不作。暖冬と春先の寒さで花が咲かず、実もわずか。大きくなりすぎた実に加え、酷暑の影響で皮も厚くなってしまったことから「今年は東浦みかんの良さがない」とミカン狩りに毎年訪れるリピーターの予約を断るほどだったという。
▶幅広く利用できるパウダーに洋菓子店や料理店から引き合い
落胆する中「皮が厚いなら、それを活かせばいい」と浩稔さんは発想を転換。導入した特殊冷凍機や乾燥機などを使い、ミカンの皮を乾燥・粉砕して「東浦みかんパウダー」を開発した。香り高く鮮やかな黄色が特徴で、製菓や料理など幅広い用途が見込める。
このパウダーが縁となり、長野県にある七味唐辛子の老舗「八幡屋礒五郎」から提案を受け「東浦みかん入り一味」が誕生。さらに、同地区の海水から精製される「角鹿の塩」と合わせた「みかん塩」も商品化された。パウダーは洋菓子店や料理店からの引き合いも多く、現在は業務用の販売を目指して品質を高めているという。
抗アレルギー作用などがあるとされる青ミカン(摘果ミカン)にも注目。アロマスプレーやポン酢に使用するほか、ショウガと合わせたシロップを試作するなど、肥料にするくらいにしか使われていなかった摘果ミカンの活用にも取り組む。
現在、「東浦みかん」を栽培するのは28戸。そのうち観光農園を営むのは5戸となった。始まりは江戸後期と歴史ある産地だが、高齢化で担い手は年々減少している。
「日本海の潮風を受けて育つ『東浦みかん』の魅力は味の濃さと酸味。甘いだけでは出ないおいしさが良い」と話す下野さん親子。浩稔さんは「母が丹精込めて先祖からつないできた東浦みかんの魅力を、これからもいろんな形で発信し、知名度を高めていきたい」と話す。
ミカン狩りは11月末まで。
予約はホームページ(https://mikanya-chobee.com/)か電話で受付☎090(2129)4128
写真①たくさん実ったミカン園で寿栄子さん(右)と浩稔さん(左)。
写真②「東浦みかん入り一味」(中)と「みかん塩」(左)摘果ミカンを使った「みかんぽんず」(中右)
